2004-06-25-Friday 金融論(第10回) 「IS-LM分析の拡張 → マンデル・フレミング・モデル」

<講義 講義名="金融論" 限="2" 担当="数阪孝志">
<日付 曜日="金">6/25
<配布プリント枚数>2 - 金融論(第10回) 「IS-LM分析の拡張 → マンデル・フレミング・モデル」など

  1. 金融論(第10回) 「IS-LM分析の拡張 → マンデル・フレミング・モデル」(参考:北坂真一「マクロ経済学・ベーシック」(有斐閣)2003年 第11章)
  2. 開放経済体系にIS-LM分析を応用した国際マクロ経済分析の基本的なモデル
    1. 資本移動が自由な小国開放経済を仮定し、物価が変動しない短期の状況では、金融政策と財政政策の効果が、固定相場制と変動相場制の下では異なることを示した。
      1. 財市場の均衡 Y(国民所得) = C(消費支出)(Y) + I(投資支出)(r) + G(政府支出) + CU(Y,e)
      2. 貨幣市場の均衡 M = L(Y,r)
      3. 小国の r = r*
  3. 財市場の需要は、消費C,投資I,政府支出G,経常収支CUの和と定義される。経常収支は、財・サービスの輸出と輸入の収支である。
    1. CU = (Y,e) = EX(輸出)(e)- IM(輸入)(Y,e)
  4. eは為替レート
    1. 自国の物価水準をP,外国の物価水準をP*とすると
      1. P = e・P*
      2. e = P/P*
  5. 小国の仮定 - 自国の利子率rが外国の利子率r*に等しくなる
    1. 内外の金融資本の移動が完全に自由なために利子率平価式が成り立つ
    2. 利子率平価式の右辺が将来も現在の為替レートが続くという予想の下で消去される
    3. 自国の経済規模が相対的に小さいために、世界利子率が与えられた下で国内利子率がそれに一致する
  • (北坂 242ページ)

小国開放経済では、国内利子率が世界利子率を上回ると資本の流入が起こり、下回ると資本の流出が起こり、それによって国内利子率が世界利子率に一致するように調整される。
金融資本が流入すると、国内の資金が豊富になり利子率が低下する。
この資本の流入の過程では、自国通貨が外国為替市場で買われるために、変動相場制のもとでは自国通貨高となる。
固定相場制のもとでは、放置すると自国通貨が高くなるので、決められた為替レートを維持するために何らかの対応が必要となる。

  1. 利子率平価式 r = r*+eet+1 - et / et
  2. 国債券への投資収益 1 + r
  3. 国債券への投資収益 (1+r*)et+1 / et
    1. (1+r) < (1+r*)et+1 / et なら外国債券への投資が有利
    2. (1+r) > (1+r*)et+1 / et なら自国債券への投資が有利
    3. 結局 (1+r) = (1+r*)et+1 / et となる
    4. ここで、来期の為替レートet+1は債券に投資する当初は予想の対象なので、その予想値をeet+1であらわすと (1+r) = (1+r*){1+eet+1 - (et/et)}
  4. マンデル・フレミング・モデルを使ってみると
    1. 変動相場制下で
      1. 財政政策は国民所得に影響を与えない。変動相場制の下で財政政策が無効になるのは、国内金利の上昇で為替レートが自国通貨高となり、経常収支を悪化させるから
      2. 金融政策は国民所得に大きな影響を与える。変動相場制の下で金融政策(マネーサプライの増加)は、LM曲線のシフトに自国通貨安(円安)による経常収支の改善が加わり、国民所得の増加に大きな効果を持つ
    2. 固定相場制下で
      1. 財政政策は国民所得に大きな影響を与える。固定相場制の下で財政政策は、IS曲線のシフトとともに、為替レートを一定に保つための自国通貨売(円安)でLM曲線もシフトし、封鎖経済の場合よりも国民所得に大きな効果を持つ。なお、為替レートが一手に保たれたままで国民所得が増加し輸入が増えるので、経常収支が悪化する。
      2. 金融政策は国民所得に影響を与えない。固定相場制の下で拡張的金融政策を行うと、国内金利の低下で資本の流出が生じ、為替レートを維持するための自国通貨(円買)がマネーサプライを減らし、当初の増加を完全に相殺してしまう。なお、為替レートが一定で国民所得も変化しないので、経常収支は変化しない。